「妊娠・出産をお考えの方へ」今から気を付ける虫歯・歯周病予防

「妊娠・出産をお考えの方へ」今から気を付ける虫歯・歯周病予防

 

山形県 鶴岡市 医療法人石田おさむ歯科医院 

歯科医師・院長 石田 修 

https://linktr.ee/ishidaosamu.dc 

 

 

鶴岡市文園町にある石田おさむ歯科医院 院長の石田です。 

 前回のブログでは、妊婦歯科健診の目的と検診の内容についてお伝えさせていただきました。自身では、お口の変化に気付きにくいため、知らず知らずのうちにお口の環境が悪くなっていることは誰にでもあります。歯科疾患のリスクが高いお口の環境は、妊娠中に胎児へ悪影響を与えるだけでなく、ご自身の食生活やご家族、出産後の子どもにも影響を与える可能性があります。 妊婦歯科健診は、赤ちゃんを守るためにとても大切な健診ですので、妊婦さんは必ず受診をお願いします。 

 しかし、妊婦歯科健診はあくまでも今の状態を知るきっかけに過ぎません。大切なのは、妊娠前からお口の環境を整え、適切な処置と治療を終えた状態で妊娠・出産に準備していくことです。 

今回は、これから妊娠・出産をお考えの方に向けて、今から気を付ける虫歯・歯周病予防の大切なポイントについてご紹介したいと思います。 

 

👉妊婦さん必見!妊婦中の歯科健診は何をするの? 

👉妊婦歯科健康診査(鶴岡市HP) 

👉妊婦歯科健康診査のご案内(鶴岡市HPより) 

 

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INDEX 

1 妊娠前に歯科受診したほうがいい理由 

2 歯科医院で行う虫歯・歯周病予防 

3 セルフケアのポイント 

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1 妊娠前に歯科受診したほうがいい理由 

妊婦歯科健診は、虫歯や歯周病などの「疾病予防」と「早期治療の促進」を目的としており、治療が必要な場合は、出産前に行い、万全の体制で出産に望んでいただくための取り組みです。 

しかし、必ずしも治療や処置を終えて出産に臨めるわけではありません。治療が必要だと言われた場合でも、悪阻(つわり)など体調の変化により、出産までに十分な歯科治療を受けることができない場合もあります。そのため、妊娠前から口腔内を良い状態にしておき、妊娠後の歯科健診で問題が見つからないことが、母体にとっても胎児にとってもベストなのです。 

特に妊娠前から食生活や睡眠が不規則で、セルフケアの習慣が定着していない方は注意が必要です。妊娠中は、女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロンが血中で上昇し、口腔内の細菌が増えやすくなります。種類によっては妊娠していない時の10〜1000倍にも増えてしまい、妊娠関連性歯肉炎や妊娠関連性歯周炎になってしまうリスクが高くなってしまうのです。 

また、歯周病の炎症があると、子宮を収縮させる作用がある物質(プロスタグランジン、炎症性サイトカイン)の血中濃度が高まります。特にプロスタグランジンは、陣痛促進剤として使用されるほど子宮収縮作用が強いため、歯周病の重症化により早産や低体重児出産のリスクが高くなります。もちろん、妊娠中に歯周病の治療やセルフケアの改善をすれば炎症を最小限に抑えることもできますし、これらのリスクを軽減することも可能です。 

しかし、妊娠中は、悪阻の影響で匂いに敏感になったり、眠気やだるさなど、私生活に影響がでることも多くあるため、歯科医院への通院やご自宅等でのセルフケアが十分にできない場合があります。 さらには、嘔吐や嗜好品の変化、食事の回数が不規則になることで、お口の中が酸性に傾き、歯のエナメル質(歯の表面で一番硬いもの)が弱くなる可能性もあります。 

さまざまな観点から妊娠中に口腔内の環境を改善するのはとても大変なことなのです。 

 

そのため、妊娠前に歯科医院を受診することで、母体と胎児の健康を守るための予防策を講じることができます。お口の健康は全身の健康とも密接に関係していますし、妊娠中にお口のトラブルを起こさないよう妊娠前から歯科医院に通い、早期発見・治療をしていきましょう。 

 

2 歯科医院で行う虫歯・歯周病予防  

歯科医院で行う予防処置として、1番重要なのが定期的な歯のメインテナンスです。 

メインテナンスは歯科衛生士によるプロフェッショナルな施術で、主な内容は以下の通りです。 

■ 歯周ポケットの検査(歯周組織検査)

■ 磨き残しチェック(歯垢の染め出し) 

■ 歯石の除去(スケーリング)

■ 専用のパウダーで着色やプラークを除去(エアフロー)

■ 専用のフッ素入り歯磨剤を使用して、歯面の清掃と研磨PMTC

■ フッ素塗布 (フッ素使用に抵抗感のある方は、お知らせいただければ対応いたします)

歯科衛生士による専門的なケアと口腔内の健康チェックは妊娠の有無に限らず、健康的に生活する上でとても重要です。お口のトラブルは、食生活だけでなく、さまざまな場面でマイナスの影響をもたらしてしまいます。

妊娠中でも定期メインテナンスを受けることが可能ですが、口腔内の環境を改善し安定した状態を作るためには、妊娠前から歯科医院を受診することが大切です。 

また、1年ごとに虫歯・歯周病のリスクを判定する唾液検査も有効的です。
当院では、「1年検診」と呼んでおり、通常のメインテナンスの他に以下の検査を受けていただきます。 

1年検診を行うことで、目視では見つけられない歯科疾患を発見し、早期治療につなげています。 

 

3 セルフケアのポイント  

皆さんは普段どんなセルフケアを行なっているでしょうか。セルフケアは、歯科医院で行うメインテナンスと同じくらい、またはそれ以上に重要です。 数ヶ月毎に歯科医院で行う定期メインテナンスだけでは、お口の細菌をコントロールすることはできません。リスクの低い状態を維持するためには、毎日のセルフケアを欠かさず行う習慣が大切です。

ポイント①: 汚れのたまりやすい場所を知る

汚れのたまりやすいところを、重点的にていねいにブラッシングしましょう。

■ 歯と歯の間

■ 歯と歯ぐきの境目

■ 奥歯の噛み合わせ面の溝

ブラッシングの際は、歯と歯ぐきの境目を意識して磨き、力を入れすぎず小刻みに動かすようにしてください。 

ポイント②: デンタルフロスや歯間ブラシを使う

歯ブラシの毛先が届きにくいところ(歯と歯が接している面、歯と歯ぐきの境目など)は、デンタルフロスや歯間ブラシを使って歯垢をしっかり取り除きましょう。実は、毎日歯磨きをしていても汚れの60%ほどしか除去できていません。虫歯・歯周病菌の繁殖を防ぐために、デンタルフロスや歯間ブラシはとても効果的です。

ポイント③: 鏡を見てチェックする

歯垢がついていないか、歯ぐきが赤く腫れていないか、歯と歯の間の歯ぐきがピンク色に引き締まっているかなどを毎回チェックしましょう。毎回チェックすることで、良くも悪くも変化に気づくことができます。

ポイント④: 歯磨き粉を選ぶ

歯磨き粉には、殺菌作用のあるもの、フッ素配合のもの、歯垢を取り除く効果や歯垢をつきにくくする効果のあるものなどさまざまな種類があります。目的やお口の状態に合わせて適切に選びましょう。特に、むし歯予防にはフッ素配合の歯磨き粉がおすすめです。

 

さらに、寝る前のケアはとても重要です。夜間は唾液の分泌が少なく、汚れが残っていると細菌が繁殖しやすい環境になります。寝る直前は、眠気や疲労感などで億劫になることもあるため、食後すぐに歯磨きする習慣がおすすめです。

 

また、ケア用品は自分にあった適切なものを使用しているでしょうか。 現代では、本当にたくさんのケア用品があり、一般的なものから専門的なものまで幅広く流通しています。お口の環境や形態、食生活、唾液の質などさまざまな要因から適切なものを選ぶことで、効率よく効果的にケアを行うことができます。

 当院では、メインテナンスを担当している歯科衛生士がお口の状態に合わせて、適切なケア用品とケアの方法をお伝えしています。かかりつけの歯科医院がある方は、ぜひ聞いてみてください。

【ケア用品の一例】

 

妊娠前にお口の環境を整え、虫歯・歯周病のリスクを抑えることは、子供のためにも、ご自身のためにも、ご家族やパートナーのためにも大切なことです。 

妊婦中に歯のことで悩むことなく、幸せな生活を送ることのできるよう今から気をつけていただければと思います。 

 

 

山形県 鶴岡市 医療法人石田おさむ歯科医院 

歯科医師・院長 石田 修 

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